企業分析ナレッジ

ロック・フィールド 利益率を犠牲にして市場占有率を狙い、流動性でカバー  

Facebook
X
Email
Print
目次

今回は、株式会社ロック・フィールドを分析してみました。どの百貨店にも「RF1」や「神戸コロッケ」のお惣菜売り場を見つけることが出来ます。女性の社会進出に伴って人口減少時代においても市場規模が伸びている中食業界の雄はどの様な経営状況でしょうか。

2006年~2015年4月期までの10年間を分析してみました。(NEWS第43号でも取り上げました。)

 

企業力総合評価は、138.66P→143.78P→149.23P→147.84P→148.73P→150.72P→158.22P→152.33P→152.58P→156.85Pと推移している。企業力総合評価が改善トレンドを10年も維持する会社は、「どうやったら会社が伸びるか。」が分かっており、ブレなく邁進している会社であると言えます。
営業効率(儲かるか指標)・資本効率(株主評価指標)は、緩やかな悪化トレンドですが、青信号領域を維持しています。惣菜業のトップ企業ロック・フィールドが、儲からなくなっているとはどういうことでしょうか。右表の後でその意図を説明します
生産効率(人の利用度指標)は、10期連続赤信号領域にあります。1人当たり売上高が10,287千円→10,584千円→11,096千円→11,096千円→10,921千円→10,699千円→10,897千円→10,632千円→10,544千円→10,674千円と推移しており、上下のブレが10,700千円を中心に4%以内と、高度に管理されています。人件費が一番高い投資という認識があり、この指標から目を離さないのでしょう。1人当たり売上高を注視する経営は伸びている会社に見られる共通の特徴です。
資産効率(資産の利用度)は、青天井で、すこぶる良いようです。
流動性(短期資金繰り指標)は、改善トレンドで天井値となりました。
安全性(長期資金繰り指標)は、10年連続天井値です。

ロック・フィールドの経営についての数字以外の考察は他に任せるとして、SPLENDID21では数字のみから、「どのような数字を目指しているか。」に特化して考察してみたいと思います。
昨今、経営計画を作成し、自社の進むべき道の数値目標を設定する会社もあります。しかし、数値目標自体が、成長セオリーを実践できている他社をベンチマークしたものでもなく、増収・増益、借入額の減少が目立つ事例が多く見受けられます。確かに、それは改善計画ではあるでしょう。しかし、売上・利益・借入額は、他の勘定科目や財務指標と相互関連性があり、循環しながら改善・悪化を繰り返すことを鑑みれば、もっと詳しく数字についての考察をしなければ成長は覚束ないでしょう。優秀なロック・フィールドでさえ、営業効率の緩やかな悪化を受け入れつつ、全体としての企業力総合評価を改善していることを確認して頂きたいと思います。

下記1~8までは、増加率指標と実数、5及び9~14までは安全性指標と実数を示します。

1番と3番を比較して下さい。経常利益は10年横ばいですが、売上高は16.71%増加しています。まるで、利益率を犠牲にし、市場占有率を高め、経常利益2,000百万円確保を目指しているかのようです。実はこのような数値目標の会社は、成功している事例は多いのです。SPLENDID21NEWS第100回記念号をご覧下さい。生産効率で同じような目標設定している会社を確認できます。
3番と5番と10番を比較して下さい。売上を上げれば資産は増加します。資産額は増加していますが、売上の伸びに必要な設備投資を計測する固定資産は減少しています。通常、増えてやむなしの固定資産を減少させているのです。
3番と7番を比較して下さい。従業員の増加を売上高の増加が上回っています。従業員の教育訓練や販売活動を支援する方策に力を入れている筈です。人口減少時代は、人材確保が難しくなることを見越しての対応であろうと思われます。
9番と12番を比較して下さい。固定負債が大きく減少し純資産が増加しています。固定負債は通常、社債・長期借入金です。これらが減って純資産を28.45%も増加させています。
自己資本比率(14番)は81.80%となりました。

まるでいつ何が起こっても会社を守り抜ける体制の構築に余念がないようです。
まとめ
金融機関に提出を求められる経営計画の精度は、借入や返済を円滑に行う目的で作成され、金融機関が納得すれば事足ります。しかし、経営者は企業の存続・成長の為の経営計画とその実践を求められます。経営計画が不完全である、目指すべき数字に適切性がないなど、経営計画の達成と企業の成長とが一致しなければ、意味はありません。
会計の力をもっともっと活用すべき厳しい時代なのです。

SPLENDID21NEWS第120号【2015年11月15日発行】をA3用紙でご覧になりたい方は下記をクリックしてください。

sp21news120ロックフィールド

関連記事

ロックフィールド トヨタをベンチマークする

Facebook
X
Email
Print
Picture of 山本純子
山本純子
株式会社SPLENDID21 代表取締役。企業評価・経営者評価のスペシャリスト。多変量解析企業力総合評価「SPLENDID21」というシステムにより、通常の財務分析ではできなかった経営全体を「見える化」するシステムを提供。 近年では様々な企業が本手法を利用して莫大なデータより有用な情報を引き出し、実際の経営に役立てています。 代表者プロフィールはこちら
Picture of 山本純子
山本純子
株式会社SPLENDID21 代表取締役。企業評価・経営者評価のスペシャリスト。多変量解析企業力総合評価「SPLENDID21」というシステムにより、通常の財務分析ではできなかった経営全体を「見える化」するシステムを提供。 近年では様々な企業が本手法を利用して莫大なデータより有用な情報を引き出し、実際の経営に役立てています。 代表者プロフィールはこちら
関連記事

東宝 ZOOM解説会のご案内 日時:2024年11月27日(水) 20時~ 料金:下記 申込期限:11月25日(月) 正午 実施方法:オンライン(ZOOM) お申込み方法:ページ下部のお申込みフォームからお申込みください […]

東宝株式会社は、日本を代表するエンターテインメント企業として、映画・演劇・映像制作などのトップ企業です。小林一三翁が1932年に設立され、最近では「ゴジラ」シリーズや「シン・ゴジラ」といった世界的に有名な作品を手がけ、多 […]

新着記事
カテゴリーで探す
目次